生涯学習と学校

生涯教育という言葉が使用されだしたのは、1965年、P.ラングランの起草した議案書に端を発しているといわれ、国民一人ひとりが学校教育の基盤の上に各人の自発的意思に基づき、必要に応じて自己に適した手段・方法を自らの責任において自由に選択し、生涯を通じて行われるべきであるとした考え方であり、それらの学習活動は、総体として学習者の「生きがい」追求につながるものでなくてはならないとしている。
社会の変化と文化の陳腐化がはやい現代社会において、新しく学習すべき内容が次々に出現し、適応性・柔軟性・問題解決的態度などが社会や個人にとって生涯学習を不可避のものとしている社会的背景がある。
生涯学習は、学校教育に関する学習活動はもちろん、趣味・娯楽・文化・スポーツ・レクリエーションなどの諸活動に関する知識技能、家庭生活や職業生活のサイクルに対応する課題、さらに市民としての責任性や社会変化にたいする課題等に関する多様な学習活動にかかわっていることから、このような幅広い学習需要に組織的に対応するためには、生涯学習にたいする「総合的」な援助を「体系的」に提供可能な学習システムとして構築することが必要である。
すなわち「生涯学習体系」は、学校教育や社会教育などの多様な教育・学習機能を分担する諸機関の連携・協力による有効適切な利用なしには実現されえないといえる。
なぜなら、人間の生涯にわたる学習は学校教育のみで完結するものではなく、生涯にわたる学習の観点からその実現がはかられなければならず、学校教育と社会教育の接点になりうるものであり、教育学習活動に関し専門的機能をそなえた学校が地域の人びとの学習欲求に応えることは、人びとの教育活動や芸術・文化活動に貢献することから、生涯学習体系の構築において、学校教育はその重要なサブシステムを構築することになるといえよう。
例えば、平成19年度から都立高校に導入された教科「奉仕」は地域や高校の特性を生かした様々な体験活動を実施している。
奉仕に関する基礎的・基本的な知識を習得させ、活動の理念と意義を理解させるとともに、社会のニーズに応じて活動し、社会の一員であること、及び社会に役立つ喜びを体験的に学ぶことを通して、将来、社会に貢献できる資質を育成することを目標としてかかげている。
奉仕体験活動の範囲は、青少年活動や教育・文化、芸術の伝承、発信・環境保護・福祉の増進・ 高齢者福祉・障害者福祉・児童福祉・国際交流、協力・まちづくり・地域安全・防災、災害救援の活動など多岐にわたっており、「奉仕」の必修化は、公共について考えることを具体的に体得できる機会となる試みである。
この教科の導入によりこれから社会にでていく学生の人間性がはぐくまれ、自立へと向かうことが望ましい。
また、奉仕体験活動の推進には家庭、地域との連携が不可欠であることから、学校教育を通して生徒だけでなく保護者、そして都民の意識に働きかける教科となることを望む。
生涯学習のなかでの学校という明確な位置づけがないかぎり、学校開放は「施設不足」解消のたんなる手段にしかならない。学習者の立場にたち「いつでも、どこでも、誰でも、何でも」学習できる生涯学習をささえる機会や場が、整備・拡充し機会を保障されることが望ましく、学校が地域の人びとの生涯学習・情報活動の拠点として機能することにより、地域における自治意識や連帯意識の形成を学校がになうという役割をもっていることになるといえよう。
生涯学習行政には、学校教育行政、社会教育行政、文化行政、労働、福祉、保健、農林水産、家庭教育、青少年教育、成人教育、婦人教育、高齢者教育等の教育行政以外の分野も範囲に含める必要があるが、さまざまな機関が実施する学習プログラムの対象や内容には類似したものが多く、そのことは学習者にとって選択の迷いを生じさせることとなる。
生涯学習は学習者にとって自由な自己学習をベースにしているため、家庭や学校、地域社会がそれぞれの固有の責任である役割や機能を果たしながらも、重複やむだをはぶいて計画的に連携・協力して相互補完し、教育・学習効果を高めることをねらった社会に存在する教育・学習機能の「水平的統合」がのぞましく、高度化・複雑化した社会の中で、人びとの多様な学習要求を援助、支援するためには、各省庁・部局の実施する生涯学習事業を「体系的」に提供できる教育・学習システムを構築することが必要である。
また同時に、学習機会を得にくい人びと・民間の学習活動等で期待しにくい学習領域や学習機会を提供することも大切である。
他方、体制の整備・拡充の推進は、生涯学習に関する地域格差を生じる・階層間の格差を拡大するおそれがあることも、機会の均等を保障するようなシステムや方法、内容上の問題が行政とのかかわりで追求されなければならない。
様々な試みが日本全国の教育現場で実施され、広がっていくことがのぞましい。

参考文献、「新解説子どもの権利条約」、永井憲一ほか編、2000年、日本評論社、「子どもの権利条約」、採択20周年記念
ユニセフ、「世界子供白書 特別版」、「みんなの生涯学習」、東京都教育庁地域教育支援部生涯学習課、NO99、100、「奉仕カリキュラム開発委員会報告書」、2006年、東京都教える育庁、「地域教育推進ネットワーク東京都協議会平成22年度事業計画」
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by artkzr | 2010-10-04 17:34 | 考察