広島県立博物館の展示

 広島県福山市の福山城公園文化ゾーン内に位置する広島県立博物館は、中世の港町として全国的に有名な草戸千軒町遺跡を中心に瀬戸内の歴史と文化に視点をあてている。
 草戸千軒町遺跡は、福山市を流れる芦田川の河川改修工事にともなって発掘調査が実施され、鎌倉時代から室町時代にかけて繁栄した町の跡と、そこで活動した人々の生活の実態を示す膨大な資料が出土し、それまでの中世社会や中世民衆に対するイメージを大きく書き替えた。
草戸千軒町遺跡出土品のうち、2930点が国の重要文化財に指定されている。
 

 当館では、この遺跡の調査・研究の成果を中心に、広島県を中心とする瀬戸内地域の「交通・交易」や「民衆生活」に関する資料を収集・展示し、この地域の歴史と、そこに暮らした人々の生活や文化に対する理解を深めることを目的とし平成元年(1989)11月3日に開館した。
運営は広島県教育委員会により同福山城公園文化ゾーン内の他の文化施設(公益財団法人ふくやま芸術文化振興財団の福山城博物館、ふくやま文学館やふくやま美術館などとは設置者が県と市で異なっているが「ふくやま文化ゾーン共通割引券」で連携をとっている。


 展示構成は①「瀬戸内の歴史をたどる」②「よみがえる草戸千軒」③「出土品は語る」という3つの常設展示室で構成され、①草戸千軒の歴史的な位置づけを理解するため、原始古代から現代にいたる瀬戸内地域の歴史を「交通・交易」「民衆生活」のテーマからたどる。

②草戸千軒町の発掘調査にもとづき、「草戸千軒」の一角を実物大で復原。
展示室の周囲には国重要文化財を含む出土遺物を生活の場面に分類して展示。

③草戸千軒町の出土遺物を産地や時代ごとに分類して展示。


「よみがえる草戸千軒」草戸千軒Ⅰ展示室は、芦田川の川底に埋もれた南北朝時代(中世)の集落跡から発掘された2930点の国重要文化財の中から、壁面に沿って遺物が展示され、展示室中心部には港町・市場町の様子が実物大で復原されている。


壁面の展示は当時の生活を装う・履く・書く・暖める・灯す・食べる・炊く・貯える・漁る・耕す・商うなどの生活用途別項目にわけ、それぞれを展示台に設置する。

通常よくみられるハイケースや行灯ケースを使用せず壁面から床までが傾斜のある展示台を使用している。


展示台は階段状のつくりとなっておりそれぞれの段に設置される遺物は、上・横からのぞきこむことができ詳細に観察できる。

また、展示台は白く、遺物という資料そのものの魅力が際立ち、陳列も、透明のケースにおさめる遺物とそのまま設置するものにわけられ、透明ケースの中に数個おかれる遺物もあれば、ひとつだけのものもあり、全てが同じ調子で陳列されているより注意をひくため、結果的にひとつひとつを丁寧に観察することができる。


生活道具によって大きさが異なるが、つちのこ(編具)の展示は階段の上段に設置され、高さはちょうどのぞきケースくらいの位置にある10cm程度の大きさなので透明ケースの中に透明のついたてで立ち上げてあり遺物がすべり落ちないように透明のテグスで固定されていた。
つちのこはダンベルのような形状なので全体中央部にくぼみがありその部分にテグスを2、3重巻き付け一度結ぶ。背後を支えるついたてに錐であけたような小さな穴がふたつあり、その穴に先のテグスを通して固定させている。


掛竹花入も同じくテグスでの固定をはかっている。花入は筒状で縦に長いため、底面より少し大きいサイズの四角形のアクリル板に四カ所穴をあけ、花入の胴体をテグスで巻いて結び、四カ所の穴にテグスを張るかたちで固定していた。


双六の駒は四方1cm以下くらいと小さいため、下段に設置されており、腰を折ってかがみ込むかたちになるが、こどもや、車いすの鑑賞者には見やすいと思われる。底上げのために透明の台の上におかれ、さらにスタンドルーペがあることによって詳細な観察ができた。



 それらの展示遺物が生活空間の中で実際にどのように使用されたかが視覚的にわかるのが展示室中央に配された実物大復原である。
船着場から集落に入り、魚具売り穀物・野菜売りなどの市場を通り過ぎると鍛冶屋・塗師屋・足駄屋の住居、奥には町の人々から篤い信仰を得ていた御堂が配置される。

集落を歩きまわり、住居の中では座ることができるため、それぞれの職人の仕事道具や生活用品、食事外の往来のようすが居住者の視線でみわたせる。
展示台に設置されている遺物が情景再現として実物大の復原の中で配置されることはそれらが生活道具として使用されていたことを想像し、過去の時代を擬似的に体験することができた。


 博物館では、展示や教育活動等における博物館側からの教育的メッセージと人々の持つ生活経験・知識等の相互作用等によって、人々が新しい意味や価値を見出していく過程を学びと捉える(「展示論」、日本展示学会、2010年)ため、鑑賞者へのさまざまな展示技法のアプローチにより体験者との相互作用が高まる結果、幅広い年齢層がそれぞれの学びを得ることができるといえる。

参考文献:広島県立歴史博物館パンフレット
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by artkzr | 2013-03-17 07:19 | museum-field-note