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2012年鑑賞した博物館の一部について

●2012年1月17日火)~4月8日(日)
神奈川県川崎市岡本太郎美術館でおこなわれた
企画展「生誕100年、あっぱれ太郎岡本太郎のパブリックアート」展
 
 パブリックアート作品を中心に紹介してあり、絵画とともに立体作品が数多く展示されていた。

各展示室に数カ所映像メディアが絵画と並び、そのモニターにはマットが施されていることから、作品の一つとして鑑賞することができた。

また、別の展示室では床の一部に透明の材質を使用し覗き込むとはるか下に万華鏡のような映像が流れるような演出になっていた。
このことは、小さな子供が発見した部分であり、作品とは150cmくらいの視線の高さで鑑賞するものという先入観では気づきえなかった。

壁と壁のつなぎ部分の隙間を覗くと、電光掲示板上に岡本太郎の言葉が上下左右にスクロールしていた。
岡本太郎という芸術家の発する〝言葉〟は、作品を深く理解するポイントとなるが、動的であることは反射的に視線で追う・読むことを行う。

同じ展示室では、岡本太郎の両親を含めた年表が文章パネルで説明され、大半をしめていることから〝観る〟と〝見る〟ことで集中力を持続させることができた。
隙間を覗き見るという行為は、前述の床と同じく鑑賞者が動くことによって成立し、一連の鑑賞の流れのなかでのアクセントになっていた。


●2012年4月4日6月24日まで
広島県福山市ふくやま美術館で行われた企画展
「写真セレクションー焼きつけられた時間:マイブリッジから杉本博司まで」
 
 19世紀における写真の発明以来、人々はどんなものを・どんな時間を・どんな空間を印画紙上に焼きつけようとしてきたのかの、写真家の試みや挑戦をテーマとした所蔵品展示である。

写真のはじまりとして初期の写真技術と化学的方法をパネルで説明し、当時の写真とともに展示していた。
時間軸で展開し、時代ごとの代表作家が紹介される。
キャプション以外に「鑑賞:ここがポイント」というA4サイズのパネルが時代・技術・作家ごとにあり、図や絵文字・色文字などで表記され、ポイントを理解しやすかった。

難点は展示位置で床から115cm程度だったため、少し腰をかがめて読むかたちになった。
写真セレクションとのことだったが、展示室中央には県出身彫刻家の立体彫刻が展示されており、関連性がわかりにくい部分があった。

一室のみの展示だったが、スペースがあいてしまうようであれば、コロタイプやガラス乾板の実物を展示したり、当時の撮影技法を映像でみせると写真の変遷がわかりやすいと思われる。

●沖縄県糸満市「沖縄県平和祈念資料館」常設展示

 1945年、アジア・太平洋戦争で最大規模の戦闘であった沖縄戦は、日本に於ける唯一の県民を総動員した地上戦であり、戦争の犠牲になった多くの戦争体験を結集し沖縄戦の歴史的教訓を次代に伝え、恒久平和に寄与しようとするものである。

展示室は1室から5室まであり沖縄戦にいたる経緯から戦後までが展開されている。
パネルによる文章はやや多めだったが、立体地図や映像・再現ジオラマなどが豊富にあった。

映像は、座って鑑賞できるようになっているが、やや上の方にスクリーンがあった。

写真の展示はパーテーションの表裏にあり、ランダムに設置され、鑑賞者は自由に動いていた。

個々に鑑賞できる映像ブース・戦争体験住民の証言をまとめた冊子が36台の書見台に設置され、それぞれが地域・年代などの体験別にわけられ、座って読めるようになっていた。

別の展示室では戦後の基地周辺の町を再現しており、過ぎた時間を疑似体験できる仕組みとなっていた。

歩きながら読む・座って読む・順路ごとに見る・ランダムに見る・体験する等、展示室ごとにメディアが変わることによって鑑賞者が使う感覚も変わるため、飽きることなく鑑賞することができるように思われる。

● 以上の展示を鑑賞してかんじることは、マルチメディアや視聴覚機器は一次資料を深く理解するために必要な二次資料であるということだ。

文字だけでなく映像があることは実体験ができない過去のことや危険なことが想像しやすくなるからである。

博物館は教育施設であるが、文字ばかり読む、もしくは読まないと展示の意味がわからないといった構成は単調で疲れると推測する。

作品と同列に並べられて流れる映像は自然と目にはいってくるものだが、同じ展示室内で動線からややはずれた映像ブースは素通りしてしまう可能性がある。
かといって視聴覚機器やマルチメディアでうめつくされると能動的に見ることよりも享受し続けてしまうであろう。

あくまでメインは一次資料であるが、一次資料をより効果的にみせるために補助装置は不可欠である。
展示によって一次資料の量は異なるが展示の配置・見せ方・二次資料の使用法によってその展覧会の完成度は大きくかわる。

人間の持つ、見る・聴く・さわるなどの感覚で感じることや、動作にリズムができる構成(歩く・座る・上を見る・しゃがむ)であれば鑑賞者は楽しく学べるのではないだろうか。

参考文献:「改訂視聴覚メディアと教育」、佐賀啓男、2002年、株式会社樹村房
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by artkzr | 2012-08-01 14:07 | museum-field-note