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2010日本における文化政策及びアートマネージメントとは何か

文化政策とは、芸術・文化を対象とする公共政策である。
ここでは狭義の意味での芸術文化を対象とした政策と共に考察したい。
そもそも文化とはイギリスの耽美派詩人で文明批評家のマシュー・アーノルドによると、人間の精神面での向上を示す言葉として位置づけるもので、教養と言い換える事もできる。としている。
教養とは学歴とは全く関係が無く、自分を振り返り自分を変えて行く作業を積み重ねた形であり、好奇心や知識欲は人間のみが持つ性質である。その手助けをするのが文化の役目ではないか?
私自身長年作品創りを続ける過程で(アートが無くても生きて行ける筈なのに。)と、幾度となく思った。
この場合、文化の手助けをしている意識は毛頭ない。
湧き上がる何かは、創る事でしか消化しない。
パズルのピースが合致して初めて完全燃焼出来るのだ。
とはいえ、これは全ての人には当てはまらない事で、アートで大成するのもごく僅かな人だ。
しかしながら芸術とは表現者あるいは表現物と、鑑賞者とが相互に作用し合うことなどで、精神的・感覚的な変動を得ようとする活動である以上鑑賞者側がその働きかけに何らかの作用を受けることでしか成立しない。
もちろん芸術をより理解する為に、深い知識はそれらの素晴らしさを引き立ててくれるがそれもまた、相対的には多い数ではないだろう。
物創りを続ける友人達の周りを見ると、その友人・親が物創りを趣味や仕事にしている等、要因は一概には言えないが環境はそれぞれに少なからず影響を与えているのでは、と思う。
環境は我々を取り巻き、我々に対して存在するだけでなく、我々やその生活と係わっている。
国宝や至宝だけを芸術と定義するのでは無く、部屋に一輪の花を置く様な身近な創造性の延長線上にある事として文化環境からも人々に歩み寄る事が必要ではないか。
1)芸術は高尚な物という認識が多くの人に染み付いている現状。アートバリアフリーが必要。
2)人は環境や街に育ち、またそれらをつくる。今はまだ自主的にアートの現場に足を運ぶしかその世界に触れる事が難しい。より身近な環境づくり。
3)絵を購入する行為やそれに伴うスペース確保や経済的な問題。
文化が根付いてなく日本では少数派である。

現日本でのアートマネージメントは文化政策と芸術と鑑賞者の架け橋となるべく、草の根運動を含めた膨大な役割を担う事が必要だと思う。
友人は言う。「私は絵を描いたり勉強した経験はないが、この絵は何か好き。」ここでは誰のどの絵かは重要ではなく、その、「何か好き」の感覚こそが重要であり具体的な説明がつかずとも綺麗と感動する感性が大切だ。
鑑賞者に感情の揺れを及ぼしうる事柄が重要な第一歩で「楽しそう」から「創ってみたい」へ自主性を促す環境を整えて行く。

文化政策のあり方として、アートに馴染みの無い人々が気軽に楽しめるワークショップや企業のメセナ活動がもっと活発になる事を望む。
それらは芸術へのほんの入り口に過ぎず純粋芸術が普遍性を無くして良しとする事ではない。
絵画でいう所のデッサンの様な基礎部分が社会に浸透するといい。
企業による複合型メセナ活動である芸術文化×まちづくり・地域活性化×育児支援はアートだけでなく多くの効果がある。
事例としては
●「花王・コミュニティーミュージアム・プログラム」(花王[株])
●「パパとキッズのアートプログラム〜世界でたった1つの絵本〜」(コスモ石油[株])
●「ベネッセアートサイト直島」(ベネッセコーポレーション)(以上社団法人企業メセナ協議会「2008年度メセナ活動実態調査」報告書)
これらの活動は地域の文化の拠点として芸術家だけでなくメセナ活動を通して子供からお年寄りまでが活力を持って文化向上に寄与し、自然に触れ、世代を超えて技術が伝承されるという、芸術文化による社会変革の可能性を広げられる事に明るい未来への希望が持てる。
特に直島は1989年の直島国際キャンプ場オープン以来、社会の変化や価値の転換に応じて継続的に変革・発展を遂げている。メセナ活動は数あれど定量的に計測したり第三者が検証できるものばかりでは無い事を含む数々の問題から持続的な活動が如何に困難を極めるか、学習を通して感じた。
故に地道な環境づくりが必要であり、時としてアートの敷居を下げ、間口を広げる事も重要なファクターではないかと思う。

アートの視点からより多くの人が楽しみ、触れ合う事の身近になる環境が今後増えていけば日本における芸術の立ち位置や需要はもちろん、希薄な人間関係・自然との共存等様々な社会問題を改善して行く事につながるのではないか。

その為にはアートマネージメントを志す者が臨機応変な対応力のバランス感覚を養い、世界中の芸術や文化・社会背景を知り日本の現状に応用し発展させていく事が必要である。

by artkzr | 2010-03-15 20:35 | 考察